2018 Venezia

 

 
 
朝一番のヴェネツィア便、着陸まで低空飛行が続く。朝日に輝くアドリア海は夢 のように美しくヴェネツィア本島と小さなムラノ島が見えてくる。

 

 

   
 
 
車でヴェネツィアに来るとパーキングは島の入口にあるトロンケットの パーキングタワー、ここに止めて小さなお船で本島へ渡る。何だか懐かし い・・・。

 

 

 
 
マルコ・ポーロ空港からバスで20分、ようやくピアッツァ・レ・ローマ(ロー マ広場)に着く。朝食はお約束のトラメッツィーニ(サンドイッチ)、 薄いふわ ふわのパンにフィリングがたっぷり入ったヴェネツィアならではのトラメッ ツィーニ。生ハムとカルチョーフィ(アーティチョーク)、小エビ とルコ ラ・・・いくつでも頂けそう。サンタルチア駅を通ってヴァポレットに乗る。

 

 

   
 
 
なんと、このヴェネツィアにも無印良品がある!それも駅の近くらしく旅用品の 「MUJI to GO」、皆さん楽しそうにお買い物をしている。隔世の感があるの は私だけではないはず・・・。

 

 

 
 
ここのところすっかり気に入っているこのアパルトマンホテル、最近パリでもよ くあるオーナーが不在の時だけアパルトマンを貸すシステム。普通のア パルト マンの一室なので まるで住んでいるように過ごせるのも楽しい。

 

 

 
 
 
ヴェネツィアはマルコ・ポーロ空港に着いてからバスでピアッツァ・レ・ローマ まで行き、ヴァポレットに乗り・・・、移動だけでも大変な時間がかか る。よ うやくホームのオステリアに到着。昔ながらのオステリアとは少し違う新しいタ イプのこのお店、タコの煮込みや鱈のペースト、サルディン・サ オールとお馴 染みのヴェネツィア料理が少しおめかしして出てくる。冷えたプロセッコを頂き ようやくほっとする。

 

 

 
 
主人が留学していたヴェネツィア建築大学、カルロ・スカルパデザインの門をく ぐると美しい中庭が見える。素敵なブックショップで本を眺めつつ友人 を待つ。

 

 

 
 
門に続く美しいエントランス、正面にはコルビジェの「開いた手」が印籠のよう に掲げられている。主人がスイスのマリオ・ボッタ事務所に居た頃の同 僚、G 氏と久しぶりの再会。もう27年のお付き合い、東京にもいらしたしトレヴィー ゾの素晴らしいお宅に泊めて頂いたこともあった・・・懐かしい お話は尽きな い。来年はまた東京でお会いするのも楽しみ。

 

 

 
 
お部屋でお休みしている間にすっかり夕暮れに。アパルトマンを出ると小さな水 路に日常に使うボートが泊まる路地、ヴェネツィアの人々暮らしが見え てくる よう。そしていよいよ大運河へ・・・。

 

 

 
 
小さな水路を抜けて大運河に出ると目の前いっぱいに広がるアドリア海、ヴァポ レットが大海原に漕ぎ出す。ヴェネツィアの観光客は年々増加の一途の ようで リアルト橋の人の多さに驚く。

 

 

   
 
 
朝型の私もさすがに3時起床のせいか少し眠い・・・。夕方までお部屋でゆっく り過ごす。パリー東京ー軽井沢をベースにウィーン、ヴェネツィアを移 動しつ つ仕事をする生活ももう数十年、モバイル生活上級者の私。どこに行っても「お 部屋がきちんと整理されている」ことがとても大切、そして疲れ すぎないこと。

 

 

 
 
 
 
ヴェネツィアの楽しみは何といってもオステリア巡り。もう20年以上通ってい るこの小さなお店、中のお席よりも外で地元の人たちに交じって樽を テーブル にプロセッコを頂くのが楽しい。まずはオリーブとモッツァレラのフリット、カ ルチョーフィのマリネに小エビのサオールをチョイス。ヴェネ ツィアは美味し いモノに溢れているので毎回「食べ過ぎないように」と自分に言い聞かせる。全 て1つずつとはさみしいけれど・・・。

 

 

 
 
結婚以来27年、通い続けているこのオステリア。主人は学生だった頃からなの でもう数十年・・・。オーナーのお名前が「MOMI」と言う奇遇から すっか りヴェネツィアのホームに。お店に入ってくる人がオーナーに「チャオ MOMI!」と言うたびに「私?」と思うのも何だか楽しくすっかり寛 ぐ。私 の好きなものを熟知して下さっていて、「好きなものだけ単品・大盛り」!

 

 

 
 
アンティパストの後はお任せで次々に出てくるものがどれも本当に美味しく ・・・最初のお店で「全部1つずつ」とさみしい思いをしたのはこのため だったのかも?シーフードのフリットはサクサクと軽く、濃厚なイカ墨となめら かなポレンタ、いくらでも頂けそう。デザートを頂かない私達には最後 にリ キュールを出して下さりしばしお喋り、ヴェネツィアの夜は更ける。

 

 

   
 
 
カルロ・スカルパの設計によるスタンパリア財団、このミュージアムショップに 私の作品が入っていた頃に泊まっていたホテルに立ち寄る。このホテル をアト リエ代わりに仕事をしていた私、皆さんにずいぶん手伝って頂いた懐かしい思い 出が蘇る。

 

 

 
 
秋風が気持ちの良い今晩、久しぶりにサンマルコ広場をお散歩しながら帰る。昼 間は大変な人とハトでごった返しているサンマルコ広場も夜は静かで美 しい。 カフェ・フローリアンの生演奏が遠くに聴こえる。サンマルコ寺院の修復がよう やく終わったらしく、20数年来初めてそのファサードを見る。

 

 

 
 
アドリア海の水面に光が映り、運河に沿ってそびえ建つ荘厳なパラッツォ・・・ ヴェネツィアの夜は本当に美しくいつまでもお散歩していたい。

 

 

   
 
 
久しぶりのヴェネツィアの朝、いつものカフェでトレメッツィーニとカプチー ノ、主人はヴェネツィアの新聞を読んでいる・・・。まだ人通りも少なく 静か な朝。

 

 

   
 
 
泊まっているアパルトマンは観光名所もない静かな地区、運河沿いを歩くとなん とも言えない海の匂いと船の音、行き交う人々の会話・・・ヴァネツィ アの 日々の暮らしが垣間見れるよう。静かな朝のお散歩・・・。

 

 

 
 
 
素晴らしいお天気の今朝、快晴の空にアドリア海が光る。大運河に出るとヴァポ レットも橋もとにかく人、人、人・・・、橋が落ちないか心配になる。

 

 

 
 
大海原をしぶきを上げてヴェポレットが進む。アドリア海の美しい碧さと澄み 切った空、いつ来てヴェネツィアは本当に美しい。観光客は年々増加の一 途だ そうで商業施設も増やさざるを得ず・・・、かつては考えられなかった工事のク レーンが見える。

 

 

 
 
ヴェネツィアの伝統的手漕ぎボート、ゴンドラ。ヴェネツィア共和国の時代に黒 の塗装が義務ずけられて以来、今も黒い船に伝統的な模様が施されてい る。昔 父と来た時に一度だけ乗ったことがあるけれど、小さな運河を静かに船が進むの は本当にポエティック。有名ホテルの前にはゴンドラがずらりと 待機してい る。橋の上にはここでも人、人、人・・・。

 

 

   
 
 
 
弟16回ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展、今年は63カ国が参加している とか。このジャルディーニの会場は各国のパビリオンで構成されてい る。今年 もなかなか暑そう・・・。 弟16回ヴェネツィアビエンナーレ国際建築展、アイルランドを拠点に活動するグラフトマン・アーキテクツの2人が掲げるテーマ 「FREESPACE」の下、建築を巡るさまざまな企画が展開される。今年は63カ国が参加しているとか。 このジャルディーニの会場は各国のパビリオンで構成されてい る。

 

 

 
 
ジャルディーニの会場は森の中に各国のパビリオンが点在していて、運河や海の 眩しさに少し疲れた目も休まる。入り口のカフェにはビエンナーレの歴 史を辿 るように各国の要人の写真、ペギー・グッゲンハイムやミッテラン大統領、北野 武と宮田亮平先生の写真も発見。ピカソやコルビジェも訪れたら しい・・・。

 

 

   
 
 
ビエンナーレが今ほど国際的ではなかった時代、会場の入り口にひっそりと佇む カルロ・スカルパのデザインによる昔のチケットブース。今ではスマホ をかざ してゲートをくぐる、ペーパーレスすら当然の時代。スカルパもさぞびっくりな ことでしょう!

 

 

 
 
 
 
スイス館の展示は「Svizzere 240 :House Tour」、あるアパートの内装の観覧ツ アーをコンセプトに、さまざまなスケールの部屋が組み合わさった迷路のような 展示。タイトルの240はリビングに 最適な高さと言われる数字から取ったそ う。真っ白な空っぽのアパート、その中にスケールの全く違うドアや窓、、巨大 と極小・・・。パビリオンを出 るとスケール感が狂ってしまったような不思議 な感覚に。コンセプトも面白いけれど、施工の完成度の高さも素晴らしい。今年 の最高賞、金獅子賞を受 賞したのはこのスイス館だったのも頷ける。

 

 

   
 
 
 
カルロ・スカルパが1950年代に設計したこのベネズエラ館、いつもその展示 より心地よい中庭に座って、少し荒っぽい仕上げのコンクリートが醸し 出す何 とも言えない雰囲気を楽しんでいる・・・。

 

 

 
 
 
1952年、日本は初めてビエンナーレに参加した後、イタリア政府からジャル ディーニに空いている最後のパビリオン用地を割り当てられるが資金不 足を理 由に見送ろうとしていた。1955年、ブリジストン会長の石橋正二郎氏が資金 を外務省に寄付し外務省予算と併せてようやく建設の運びになっ たと言う。 1956年、吉坂隆正の設計により完成したのがこの日本館。

 

 

 
 
 
今年の日本館はキューレーターの貝島桃代氏がロラン・シュトルダーと井関悠を 加えたキューレーターチームを構成し「東京発 建築民族誌ー暮らしの ための ガイドブックとプロジェクト」をテーマにした展示。「大学の設計スタジオ、建 築設計事務所あるいは美術作家の実践から生まれた、設計詳細図 から空間と活 動の連関図、ハイブリッドな都市環境図、自然災害後の農山漁村の大規模調査ま で、過去20年間、世界各地の42作品を取り上げてい る」と語って居られる ように、膨大なフィールドワーク、実際の調査、その結果をドローイングを用い たガイドブックに纏め上げる・・・。気の遠くな るような地道で緻密な作業を 20年間も続け、その結果を世界中の人がビエンナーレという国際的な会場で見 られることに大変感動する。

 

 

 
 
 
昨年まで日本館の前に涼しげな木陰を作っていた大木、今年は切り株に・・・。 中が空洞になっていたのを見ると危険だったのかも知れない。目立たな いけれ どベンチに座ると目に入ってくる石のオブジェ、吉坂隆正氏が置いたのだろう か?何とも風情があるヴェネツィアの小さな石庭・・・。

 

 

   
 
 
いつも楽しみにしているドイツ館、展示も毎回コンセプチュアルで面白いけれど 何よりスゴイのはその規模と施工の素晴らしさ。ビエンナーレなのでも ちろん 全ては仮設なのだけれど、ここまでやる?・・・その作りこみのスケールの大き さと施工の完成度の高さには驚く。ほぼ建物をもう一つ作りまし た、という時 もあった。今回も何だかスゴそう。

 

 

 
 
 
 
ドイツ館に入ると一見、一面の黒い壁に迎えられる。今年はベルリンの壁が崩壊 して28年、壁が建っていた年月と同じ年月が経ったことを記念して、 テーマ は「壁」のよう。 一面真っ黒に見えたパネルの裏にはさまざまな「壁」についての研究が展示され ている。床から滑らかに立ち上がっているパネルの施工の美しさ、角度 によっ ては白と黒のパネルが交差する現代アートのような空間、全てにおいて高い美意 識と完璧主義、ドイツ人気質をヒシヒシと感じる。いつもの事な がら、これが 仮設とは信じられない・・・。

 

 

   
 
 
ベルリンにまつわる計画の展示。やはりベルリンの建築計画といえばリベスキントははずせない。

 

 

   
 
 
 
ドイツ館のあまりの完成度の高さと、屈強で威圧感すら感じる巨大パネルの林立 に少々参り、ファジーで楽しげなフランス館の展示がいつになく心地よ い。し かしコンセプトはなかなか硬派で、いかにもフランスらしい「SOLIDARITE−団 結・連帯」の思想を思わせるー「廃墟になった建物に新 たなコミュニティーを 生み出そう」ーというもの。壁面いっぱいに日用品を貼り付けた何とも生活感の あるカワイイ展示。子供の頃遊んだチャールズ・ イームズのカードを思い出す。

 

 

   
 
 
 
今年のビエンナーレで特別賞となったイギリス館、展示のテーマは「島 −Island」。あえて館内には展示を行わずイベント空間としてプラット フォー ムとし、屋上に仮設の広場を出現させた。建築現場のような仮設階段を上るとパ ラソルの並ぶ広場が仮設のカフェに。数年前に訪れた空中都市、 香川県の「坂 出人工都市」を思い出す。障害者やお年寄りのためのエレベーターも設置されて いたけれど、見る側に大変な労力がかかるのはいかがなも のか?疲れていた私 は上がれずベンチで待っている間に蚊に刺される・・・。

 

 

 
 
 
 
北欧3カ国共同のパヴィリオン、建物の開館時から植えられている樹木が年々豊 かに茂り涼やかな陰が真っ白い空間に美しく映える。今年は60年代風 の近未 来的な展示、半透明の白い巨大な球体が浮かぶ不思議な空間。珍しく空調が効いているのも心地よく、 何だか雲の中に居るような錯覚に・・・。

 

 

   
 
 
 
現在はチェコ、スロバキアとも独立した国となった旧チェコ・スロバキア館、今 年はユネスコではなく「UNES−CO」というコンセプトでアーティ ストが 「ユネスコの世界遺産に指定された街にも普通の生活がある」とその狂乱に一石 を投じるような展示。世界遺産には賛否両論あるけれど、やはり その経済効果 は大変なものがあり、特に後進国では外貨を稼ぐ大きな観光資源になりう る・・・。この色もモチーフもない「真っ白な旗」、個人的には 今回のビエン ナーレで最も気に入った作品。

 

 

 
 
 
 
デンマーク館は「可能な空間ー共同革新による持続可能な発展」と言う難しいタ いトル。何だか難しくて私にはよくわからないけれど、パビリオンを覆っている人工繊維の 膜は支柱がラ イトになっている面白い構造。夜になったら幻想的な光を放つオブジェのようなパビリオンになりそう。

 

 

   
 
 
 
ひときわゴージャスなロレックス・パビリオン。「ロレックスと建築」という テーマで、ロレックスが建築家に依頼して建てたプロジェクトが一覧でき る アーカイブのよう。隈研吾氏によるテキサス州ダラスの新しいロレックスビルの プロジェクトや、先日訪れたスイス・ローザンヌにある妹島和世氏に よるロ レックスラーニングセンターなど。全てにおいてゴージャスでそのシステムも完 璧、スイスそのもののようなパビリオン。

 

 

   
 
 
 
オランダ館に入るとオレンジ一色の巨大ロッカールームが広がる。オートメーション(自動化)が人間のあらゆる活動に影響を及ぼす時代、空間や身体 の影 響についての考察をロッカールームを模した空間からドア越しに展開されるイン スタレーションで表現しているとか。鮮やかなオレンジのロッカー が開くと奥 には「さまざまな状況の部屋」のインスタレーションが続いていてそのまま引き 込まれてしまいそう。

 

 

 
 
 
ベルギー館はブルーの舞台を前に靴を脱いで奥まで歩いて行く・・・、という体 験型のインスタレーション。個人的には視界が白とブルーだけに支配さ れる体 験がとても面白くて気に入ったけれど、一回に入れる人数の制限があったり、靴 を脱いだり・・・世界中から人がやって来るビエンナーレの展示 方法としては 少し難しいような気がする。

 

 

 
 
 
スペイン館の展示はいつもダイナミックで楽しみにしていたけれど、今年はずい ぶん学術的で・・・。「建築家の新しい学際的なプロフィールに重点を 置い て、国内のさまざまな学習環境で開発された提案と研究を通じて、フリースペー スと言うテーマに応える」という展示。美しいレンガのファサード に時折色が 変わる蛍光色の光のインスタレーションが美しい。

 

 

 
 
 
ジャルディーニの会場は各国のパヴィリオンに分かれているけれど、イタリア館 はさまざまな国のアーティストとコンセプトが混在している。全く違う コンセ プトのブースが隣接しているのも面白い。

 

 

 
 
イタリア館の中ほどにカルロ・スカルパがデザインした小さな中庭がある。生い 茂った蔦が水面に映って何とも言えない不思議な空間。静かなエアーポ ケット のような秘密の中庭、私はここがとても好きでいつも一休み・・・。

 

 

 
 
 
ビエンナーレの会場も年々整備されてきて今ではこんな図書館まである。ビエン ナーレの資料が閲覧できるアーカイブのようなこの図書館、壁には過去 のビエ ンナーレのポスターが貼られ毎年来ているので懐かしいポスターも数々。それに しても素晴らしい図書館。

 

 

   
 
 
ジャルディーニの会場は広いので密かにものすごく歩いている。さすがに疲れて 各パヴィリオンの前にあるベンチで一休みしたいところだけれど、なん せヴェ ネツィアには「キロノミディ」という運河に住んでいる小さな蚊が・・・。ようや く安全な場所を発見、ビデオアートを見ながらしばしお昼ね。

 

 

   
 
 
ビエンナーレの会場にはカルロ・スカルパがデザインしたさまざまなものが残っ ている。何とも不思議なこの窓、スカルパもここから外を見たのかもし れな い・・・。

 

 

 
 
一瞬、窓の外は海?・・・と思うとこれは全てCG。フランス人の建築家ユニッ ト、ラカトン&ヴァッサルのインスタレーション。何とも不思議な面白 い空間 体験。

 

 

 
 
   
 
 
 
 
 
ビエンナーレに来るとさまざまなインスタレーションやリサーチの展示を「好き も嫌いもなく見続ける」、という普通の展覧会ではありえない体験が面 白い。 延々と続く会場、設営や撤去も膨大な作業、更に運搬手段は船・・・。

 

 

   
 
 
コルビジェがヴェネツィアの病院のコンペティションでプレゼンテーションに来 た時の写真。実際に建つことはなかったそうだけれど、もし建っていた ら世界 遺産の街に世界遺産?文化の入れ子のような出来事に!

 

 

 
 
 
 
 
 
イタリア館はメイン会場だけあって本当に広い。建築に纏わるさまざまなインス タレーションが渾然一体となって延々に続く中、選り好みしないで見続 けるこ とで自分でも気が付かなかった「自分の好み」がはっきりわかって来ることが面 白い。建築展という事もあって色や形はもちろん、雰囲気や空間、そして空気感・・・。 「静かで、半 透明の白っぽい空間、複雑でない構成、さらさらした感触」、私の好みはこんな感じ・・・。テーマである「FREESPACE」を 体感した今回のビエンナーレ。

 

 

 
 
ジャルディーニの会場を出るとカルロ・スカルパがビエンナーレ会場前にデ ザインしたパルティザン追悼のインスタレーションがある。波に打たれうっすら苔生して、 芝生の 緑とアドリア海の碧さのコントラストに挟まれ本当に美しい。作品が置かれる環 境もインスタレーションの大切な要素であり、毎年のことながら あまりにもた くさんの作品を見て疲れた心がすぅーっと浄化されていくような気持ちになる。

 

 

   
 
 
今年もお天気に恵まれビエンナーレを満喫する。ヴァポレットが岸から離れ美し い濃い緑の森と深い蒼さの海、ビエンナーレの赤いパネルが遠くな る・・・。

 

 

   
 
 
仕事で一年に何度もヴェネツィアに来ていた頃はよくアクア・アルタに遭遇し た。サンマルコ広場も一面海のようになり水面に全ての建物が映り込み、 この 世のものとは思えない幻想的な美しさだったけれど。ヴァポレットの船着場でこ んなアクア・アルタの地図を発見、一斉に脚立のような通路が出来 ることにも 驚いた。

 

 

 
 
 
ようやくジャルディーニを見終わっていつものホームで一休み。冷えたプロセッ コとトラメッツィーニ、オリーブのフリットも美味しい・・・。

 

 

 
 
ヴェネツィアに来るとあまりにも美しくてついたくさん写真を撮ってしまう。快 晴のアドリア海の圧倒的な美しさも素晴らしいけれど、暮れてゆく空に 色濃く なって行く運河もニュアンスがあって美しい・・・。

 

 

 
 
家族ぐるみで長いお付き合いのT教授のご家族が偶然にもヴェネツィアに居られ るとのことで、ダニエリホテルのロビーでお待ち合わせ。久しぶりのダ ニエリ は相変わらず本当にゴージャス、映画祭の前とあって豪華な映画関係者でごった 返すロビー。ラウンジから低く流れてくる生演奏の調べ、何だか 映画のシーン の中に居るよう・・・。昔、父と来た時のことを懐かしく思い出す。

 

 

   
 
 
息苦しくなるほどゴージャスなダニエリのロビー、天井にはヴェネツィアングラ スのシャンデリア。ムラノ島でたくさんのシャンデリアを見たけれど日 本のイ ンテリアには到底無理・・・。この濃厚な空間だからこそこのシャンデリアが華 奢で美しく見えるのだから。それにしても濃い空間に濃い 人々・・・。

 

 

 
 
ヴェネツィアのお楽しみはやっぱりオステリア、リストランテよりカジュアルで アンティパストとプロセッコを頂くのが我が家の定番。今晩もいつもの ホーム で皆さんとご一緒する。 イカ墨とポレンタはヴェネツィアならではのお料理、いつもは出てこないマルサ ラの香りのビスコッティやレモンのリキュール、リモンチェロも素敵な デジェ スティフ。オーナーに家族ぐるみの大切なお付き合い、とお伝えしていただけ あってお心尽くしのおもてなしに感謝する。皆で夜風に吹かれつつ サンマルコ 広場まで歩く。思い出に残る素敵な夜・・・。

 

 

 
 
 
皆さんをホテルまでお送りしてアパルトマンに戻る途中いつものホームにご挨 拶。今回は定休日と重なってあまり来られなかったけれど、相変わらず 凝った アペリティフを出して下さる。リコッタやペコリーノチーズにフルーツやジャム を合わせて、プロセッコとの相性も素晴らしくヴェネツィアの夜 は長い・・・。

 

 

   
 
 
ビエンナーレのもう一つの会場アルセナーレに行く今日、毎年炎天下を歩く事に なるこの会場、グルーミーなお天気が嬉しい。

 

 

 
 
ヴェネツィアンガラスは色も技法も大変な種類があって、ピースを作るにもそれ ぞれの職人さんにそれぞれ得意の技法がある。細かい細工のためのお道 具の数 も大変なもの、ガラスが溶けて色が交じり合う瞬間の美しさ・・・いつまでも見 ていたい。

 

 

   
 
 
 
 
ヴェネツィアのオステリアは数多くあるけれど、もう10年近く、いえ20年近 く?同じお店にしか伺わない。少しヴァリエーションを増やしたい?と 思うこ とがあっても毎回2泊3日なので、「ホーム」と決めているところに行くだけで 終ってしまう。さらにメニュウのチョイスも本当に毎年同 じ・・・、昨年の HPを見ると「あれ?これは今年?」と思うほど。マダムのオススメのアンティ パスト、プリモのニョッキやパスタまで今年も同 じ・・・。美しい中庭を眺め ながら来年も同じメニュウを頂きたい。

 

 

 
 
こちらも毎年恒例のコース、旧造船所の前を通ってアルセナーレの会場へ。建物 の正面にある獅子のレリーフはヴェネツィア共和国のシンボル、今では 島を見 守る守護神のよう。

 

 

 
 
小さな運河に面した路地、赤いビエンナーレのオブジェのようなサインが見えて くる。この壁の向こうに壮大な空間が広がっているとは想像すら出来な い静か な運河沿い・・・。

 

 

   
 
 
その昔まだデジカメが主流だった時代、今とは違って「電源の確保」は旅の重要 課題?でもあった。今や世界中どこに行っても「WIFI」のマークと 電源 BOXがセットのようにある事は本当に隔世の感がある・・・。充電している 間、しばしカフェでお休みする。

 

 

   
 
 
 
ヴェネツィアビエンナーレのもう一つの会場であるアルセナーレはヴェネツィア 共和国時代の国立造船所、延々と続く広大な旧造船所に作品が並ぶ。

 

 

 
 
 
 
 
 
 

 

 

 
 
 
妹島和世氏のインスタレーション、透明でゆらゆらしフォルムにアルセナーレの 赤レンガが映り込んで不思議なオブジェのよう・・・

 

 

 
 
 
建築家のコンセプト模型やインスタレーションが延々と続く長いながいアルセ ナーレの会場。突き当たりには何本もの白い柱が立ち並ぶ。真っ白な高い 柱に 囲まれる不思議な空間体験、ギリシャのミコノス島の真っ白な街並みを思 い出す。

 

 

   
 
 
ビエンナーレはとにかく歩く・・・。旧造船所であるこの長い建物がアルセナー レの会場、まずはカフェで一休み。

 

 

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今年もオフィシャルスポンサーのアルテミデ。ミケーレ・デ・ルッキデザインの アームライト、TOLOMEOの巨大モデルが並ぶカフェから運河を眺 める。

 

 

 
 
 
今回のビエンナーレで最も気に入った作品、真っ白い空間に不思議なオブジェと こだまするような瀧の音、LEDの青白い光の濃淡が繰り返される。コ ンセプ トが明快な建築模型より、こんなイメージを空間にしたインスタレーションの方 が見る側のイマジネーションを膨らませてくれる。私の好きな 「静かで半透明 な白っぽい空間、さらさらした感触・・・」。

 

 

 
 
長い旧造船所の建物を出るともうすぐそこは運河、海からの風が爽やか・・・。 運河沿いにもオブジェが並びイタリア館がそびえる。

 

 

   
 
 
これは作品なのか?はたまた誰かが石を集めて置いたのか?ビエンナーレの会場 ではこんなことがよくある・・・。

 

 

   
 
 
立体トラスが重なったようなこの作品、今回のビエンナーレで大変評価の高いヴェトナムの作家の作 品とのことだけれど、複雑な構造体が美しく隠されている建物が好きな 私には 少し難しい・・・。

 

 

 
 
 
 
 
アルセナーレの建物に戻り折り返すようにエントランスに向かう。各色に光る水 玉の空間、天井からビームのように光線が反射するインスタレーショ ン。 赤レンガの暗い建物の中では白っぽいLEDの光の視覚的効果は絶大、そのコントラストが面白い。

 

 

 
 
 
天井からスリットの入った白い幕を下げただけという単純なインスタレーション でありながら、その空間体験はとても面白い。スリットの間に立つと両 側の幕 が波打つようにゆらゆら揺れ、白い幕にLEDの光が反射して飛行機が雲の上に 出た時のような眩しさ・・・。何とも不思議な空間体験。

 

 

 
 
今年のビエンナーレもそろそろ終了、ようやくエントランスに戻って来る。光の 中から入ってくる人と出て行く人が交差して何だか映画のワンシーンの よ う・・・。

 

 

 
 
 
 
アルセナーレの会場の前にある香港パビリオン。「タワー」という一つの形状に さまざまな建築家が思い思いのインスタレーション。素材もアクリルや 木、塩 ビなどそれぞれのコンセプトによって違いとても面白い。タワーマンションが林 立する最近の香港を象徴するような展示。

 

 

   
 
 
ビエンナーレは屋外を歩く事が多いので灼熱はつらい・・・、かと言ってヴェネ ツィアで雨もまた厳しい。今年はちょうど良く雲っていて気持ちよく過 ごせ た。悪天候ではヴァポレットも荒波で揺れるしタクシーもない。アクアアルタに なったら長靴も必要・・・、ヴェネツィアの暮らしは本当に大変。

 

 

   
 
 
今日は最終のパリ便に乗るのでいつものホームにご挨拶がてら立ち寄りトラメッ ツィーニをテイクアウト。毎晩お馴染みのカフェに行くのもパリのよう で楽しい。出発前にオーナー御夫妻としばしお喋り、すっかり寛ぐ。

 

 

   
 
 
ヴェネツィアの市内も来る度にさまざまに変わっていて驚く。バスターミナルが あるピアッツァ・レ・ローマには電動のトラムの駅、バスや電車に代わ る新し い交通手段は全て電動。中世のようなヴェネツィアの街に未来都市のような電動 トラム・・・。

 

 

   
 
 
初めて来た20数年前とは隔世の感があるマルコ・ポーロ空港。その昔の空港と は思えない佇まいが今では懐かしい。ミャンマーやラオスに降り立った 時、昔 のヴェネツィア空港を思い出したこともあった・・・。

 

 

 
   
 
 
相変わらず享楽的なアリタリア空港のラウンジ。最終便を待つばかりと言うの に、プチフールのようなサンドイッチやフィンガーフードのようなアン ティパ ストが後から後から出てくる。プロセッコの栓がポンポンと抜かれ・・・、どこ ぞのカフェかオステリアのよう。

 

 

 
 
 
trip index パリ行きの最終便も無事に飛び今年もヴェネツィアの旅が終る。パリ上空を低空 で飛ぶ今晩、久しぶりにエッフェル塔が見えて感激する。やっぱりパリ に戻る とほっとする・・・。 page top

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